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永井 晴康; 茅野 政道*
点発生源からのメソスケール拡散シミュレーション; 福島第一原子力発電所事故をふまえて(気象研究ノート第248号), p.1 - 58, 2023/09
原子力機構は、国内外の原子力事故時に大気放出される放射性物質による影響を評価するために緊急時環境線量情報予測システムSPEEDIおよびその世界版WSPEEDIを開発した。これらのシステムは、実際に発生した原子力事故への対応をはじめ、様々な大気拡散事象に応用され、多くの実績を上げてきた。ここでは、これらのシステム開発の経緯と概要、システムの検証、そしてシステムの利用実績について解説する。
寺田 宏明; 永井 晴康
Isotope News, (775), p.44 - 48, 2021/06
国内の原子力緊急時に迅速に放射性物質の大気拡散予測情報を提供するための緊急時対応システムとして、旧日本原子力研究所(現在の日本原子力研究開発機構、以降「原子力機構」)は、緊急時環境線量情報予測システム(System for Prediction of Environmental Emergency Dose Information: SPEEDI)を開発し、「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム」として文部科学省により運用された。その後、原子力機構では、計算範囲の拡大と高度な気象及び拡散計算モデルの使用により予測性能を向上した世界版SPEEDI (WSPEEDI: Worldwide version of SPEEDI)を開発し、様々な応用研究を行ってきた。筆者らは、2011年3月11日に発生した東日本大震災に起因する東京電力福島第一原子力発電所事故に対して、このWSPEEDIの活用により様々な対応を実施してきた。この経験に基づき、様々な気象条件や任意の放出条件に対する大気拡散計算結果を即座に取得でき、様々な応用が可能な大気拡散データベースシステムWSPEEDI-DBを開発した。本稿では、WSPEEDI-DBの開発の経緯と本システムの概要について述べる。
谷村 嘉彦; 西野 翔; 吉富 寛; 古渡 意彦; 大石 哲也
Progress in Nuclear Science and Technology (Internet), 6, p.134 - 138, 2019/01
福島第一原子力発電所事故のような原子力災害時においては、様々な放射性物質が環境中に放出され、線量を増加させることが考えられる。線スペクトルを測定し、核種を同定することは外部被ばくと内部被ばくの両方に対する放射線防護上重要である。そこで、市販のCdZnTeスペクトロメータを選び、線入射角度依存性と使用可能な線量率範囲をFRSの校正場で試験した。その結果、全体の85%をカバーできる135において感度低下は15%以下であり、200Gy/h以下の空気カーマ率の場においてスペクトルが測定できることがわかった。
岡 潔
機械の研究, 57(6), p.641 - 649, 2005/06
平成11年9月末に発生したウラン燃料加工工場における臨界事故(JCOの臨界事故)では、放射線レベルが高く、事故現場への人のアクセスが困難であった。このため、事故現場の状況についての情報が不十分で、事故の収拾を大幅に遅らせた。この臨界事故のように、原子力施設で事故が発生し、放射線により人がアクセスできない場合、事故をできるだけ早く収拾するために、事故現場に即座に侵入し、情報収集や事故拡大防止・停止処置作業を行うロボットの開発が必要となった。このような背景の下、日本原子力研究所では、これまで原子力施設用ロボット及び核融合炉用保守ロボットの開発を通して養ってきた知見や経験等を生かし、「事故時情報遠隔収集ロボット」(RESQ: Remote Surveillance Squad)の開発と並行して、より放射線レベルの高い環境下で作業が可能な「耐放射線ロボット」(RaBOT: Radiation-proof Robot)を開発した。本報告では、RaBOTを中心にその開発内容と遠隔作業の概要を述べる。
岡 潔
JAERI-Research 2004-009, 225 Pages, 2004/07
現在のロボットは、アミューズメント,福祉,防災など、さまざまな分野への適用が要求されているが、実用的な環境条件下ではシステムとして成立しているロボットは少ない。それは、ロボットが単に要素技術の積み重ねで実現できるものではなく、ロボットを構成する各要素について吟味,調整,改善等の検討を通して、各要素間のバランスを保ちながらロボットシステム全体の中で最適化される必要があるためで、多数の要素から構成されるロボットのシステムインテグレーションは、実際に使用可能なロボットを実現するうえで最も重要な課題である。本報では、このシステムインテグレーションに関する課題を解決するために、核融合施設の保守や原子力施設の事故時の救済を行う代表的なロボットシステムについて、開発に必要不可欠となる手法や要素技術について述べる。特に、ロボットに与えられた環境条件や作業条件からの観点だけでなく、ロボットのシステムバランスからそのロボットに必要となる要素技術の再構築と最適化の観点をも考慮して、実用的なロボットシステムの実現に向けた手法を提案した。これらのシステムインテグレーションを考慮した手法の提案により、核融合装置の保守や原子力施設の事故時の救済に対して実環境下で作業が可能なロボットシステムの実用化の推進に貢献した。
岡 潔; 檜山 昌之*
計測自動制御学会論文集, 40(1), p.109 - 116, 2004/01
国際熱核融合実験炉(ITER)の核融合反応空間である真空容器内部を構成する機器は、真空容器内に発生する二重水素と三重水素(D-T)の燃焼による14MeVの中性子により放射化され、反応停止時の保守時においても高放射線環境下となるため、これらの機器の保守・交換は全て遠隔操作で行うことが要求される。一方、平成11年9月末に発生したJCOの臨界事故では、放射線の空間線量率が高く、事故現場への救助活動員のアクセスが困難となり、事故現場の状況についての情報が不十分で、事故の収拾が大幅に遅れた。このため、日本原子力研究所では、これまでに人の代わりに真空容器内機器の交換・保守を行う各種遠隔操作機器の開発及び事故現場に即座に侵入して情報収集や事故拡大防止・停止処置作業を行うロボットの開発を行ってきた。本件では、このような背景を踏まえ、核融合炉内や原子力事故時等の高放射線環境下で作業するロボットに搭載可能で、ロボットと対象物間の距離を測定することが可能な距離測定手法について新たに考案したので、その原理について述べるとともに、本手法を基に設計・製作を行った距離測定センサについて、その概要と特性試験結果を報告する。また、本センサの原理を実際に原子力事故時対応ロボットに適用した例についても併せて報告する。
岡 潔
日本機械学会誌, 106(1019), p.765 - 768, 2003/10
平成11年9月末に発生したウラン燃料加工工場における臨界事故(JCOの臨界事故)では、放射線レベルが高く、事故現場への人のアクセスが困難であった。このため、事故現場の状況についての情報が不十分で、事故の収拾を大幅に遅らせた。この臨界事故のように、原子力施設で事故が発生し、放射線により人がアクセスできない場合、事故をできるだけ早く収拾するために、事故現場に即座に侵入し、情報収集や事故拡大防止・停止処置作業を行うロボットの開発が必要となった。このような背景の下、日本原子力研究所では、これまで原子力施設用ロボット及び核融合炉用保守ロボットの開発を通して養ってきた知見や経験等を生かし、「事故時情報遠隔収集ロボット」(RESQ: Remote Surveillance Squad)の開発と並行して、より放射線レベルの高い環境下で作業が可能な「耐放射線ロボット」(RaBOT: Radiation-proof Robot)を開発した。本報告では、RaBOTを中心にその開発の概要と現状を述べる。
坂本 隆一; 斎藤 公明; 堤 正博; 長岡 鋭
保健物理, 36(4), p.297 - 307, 2001/12
外部被ばく線量に影響を与えるファクターとしては、事故後の放射性核種の沈着分布,放射性核種の種類,核種の地中分布,降雨,積雪,半減期,家屋等の遮蔽効果,除染効果,生活パターン等がある。本調査研究では、チェルノブイリ地域において、これらのファクターに関係するデータを1992年から可能な範囲で継続的に収集を行った。本研究のおもな成果は次に示す4項目にまとめられた。(1)広域に汚染した地域の放射線レベルを迅速にサーベイする方法の開発、(2)汚染地域の住民に対する外部被ばく線量を推定する方法の検証、(3)線線量評価用基本データのモンテカルロ法による整備、(4)汚染環境場の特性解析。以下、本報告では、調査や実験の概要を項目別に述べ、その後におもな成果を記述した。
山原 武
第26,27回NSネット安全キャラバン講演録, p.1 - 30, 2001/10
本講演では、東海研究所の防護活動,JCO臨界事故時における活動の概要及び東海ノア協定の活動について述べる。東海研究所の防護活動については、安全管理体制,異常発生時の通報連絡体制,防護活動の組織・体制,防災監視システム等について紹介する。JCO臨界事故時における活動については、平成11年9月30日から10月2日にわたって行った東海研究所対策本部,保健物理部等の支援活動の概要を紹介する。東海ノア協定の活動については、自主保安にかかわる点検協力活動,安全教育にかかわる協力活動,緊急事態の協力活動を想定した訓練等について平成12年度の活動を中心に紹介する。
小林 忠義; 宮島 和俊; 柳原 敏
日本ロボット学会誌, 19(6), p.706 - 709, 2001/09
平成11年9月に東海村で発生したJCO臨海事故では事故現場の状況把握が困難であったため、事故の終息に向けた対策に多くの時間を要した。原子力施設で事故が発生した場合、事故現場に人が近づくことは放射線による被ばくの危険性があり困難な場合が多く、事故の原因究明や収束・復旧方法の検討に必要な情報を収集して、安全な場所に待機する人間に情報を伝達するロボットの整備が求められることになった。このため、原研では、これまで原子力施設の保守,解体作業等を対象にしてロボット技術の開発を進めてきたが、それらの技術や知見を役立てて原子力施設事故時対応のための情報遠隔収集ロボットの開発を行った。本報告では、開発の経緯と開発した情報遠隔収集ロボットの概要等について紹介する。
not registered
JNC TJ4420 2000-002, 794 Pages, 2000/03
放射線利用技術や利用事業所、さらに一般の科学技術などを人々がどのように、またどの程度に受容しているかを明確にすることは、原子力エネルギーの社会受容促進に係って極めて重要である。これらの事柄に関して、本研究では原子力発電所立地地域である福井県嶺南地域、および非立地地域である嶺北地域とを対象地域として社会調査を行い、その結果を統計的に分析した。本研究での調査項目は、放射線利用事業者が人々にどのようにとらえられているか、その信頼性形成の要因を問うもの、近年の原子力関連事故の印象や恐怖の度合いを問うもの、JCO事故前後での人々の原子力に対する態度変容を問うもの、原子力技術を含む9種類の科学技術に対する受容性、非受容性を問うものなどからなっており、上記の各地域でおのおの500サンプルのデータを、調査員訪問留置法によって回収した。取得結果の分析から、人々は放射線利用事業者や発電事業者に対して概ね信頼感を抱いているとは言えるが、この信頼感は人々の属性に大きく依存して変動することや、全体の25%前後の人々が、JCO事故を機に原子力発電について否定的な方向に意見を変えたことなどがわかった。放射線利用技術の社会的受容性、非受容性に係る諸因子間の因果関係を明らかにするためにパス解析も行い、こうした技術の社会受容促進を検討する
not registered
PNC TJ1533 97-002, 133 Pages, 1997/03
本調査研究の目的は、個々の施設の安全性にのみ着目した環境影響評価ではなく、核燃料サイクル全体を通しての地球規模での環境影響評価を行うための手法等の検討を行い、他のエネルギー源に係る環境影響との相対的評価手法の基礎を確立することである。このため本年度は上記目的達成のための第一段階として以下の調査を行った。(1)各種エネルギー源に係るリスクプロセス、リスクソース等の調査研究各種発電エネルギーに伴うリスク、既存の核燃料サイクルに関するリスク-ベネフィット研究、事故影響評価の手順について調査を行った。(2)リスク評価手法に関する調査研究大気拡散のモデル化と濃度評価事例、放射性核種の大気中での移行について調査を行った。(3)一般公衆のリスク認知に係る社会科学的評価手法に関する調査研究リスク認識、リスク受容に関する討論を行った。(4)各種エネルギー源へのライフサイクルアセスメント手法適用に関する調査研究ライフサイクルアセスメント評価事例について調査を行った。
木名瀬 栄; 高橋 知之*; 佐藤 仁士*; 山本 英明; 斎藤 公明
no journal, ,
原子力機構は、住民帰還などの復興に役立てるため、平成26年度原子力規制庁受託業務「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質の分布データの集約及び移行モデルの開発事業」の一環として、福島第一原子力発電所から80km圏内を対象に、環境に沈着した放射性セシウムを起因とする空間線量率分布の長期的予測手法を開発した。2成分1コンパートメントモデルである放射性セシウムの分布状況変化モデルとALOS土地利用形態ごとのモデルパラメータ(減衰が速い成分の環境半減期や減衰が速い成分の割合)を適用することにより、福島第一原子力発電所から80km圏内の空間線量率分布の予測図を作成可能にした。
野澤 隆
no journal, ,
原子力機構が実施している「福島原子力事故関連情報アーカイブ」の取り組み及び成果発信、並びに今後の展開について説明する。
斎藤 公明
no journal, ,
大規模な原子力事故が起きた場合その影響は長期にわたるため、放射線防護や環境修復の対策を最適に実施することが必要であり、そのために中長期環境モニタリングを適切に行い信頼のおけるデータを継続的に提供することが重要である。将来事故が起きた場合の中長期モニタリングに関する基本方針や体制整備の方針は国際的にも国内的にもまだ完全には確立されておらず、様々なレベルで検討が進められている。福島事故後には事前準備は十分ではなかったが多くの関係者の努力により大規模モニタリングが継続して実施され、技術面での発展及び貴重な経験の蓄積があった。これらの福島事故後の教訓を基に、大規模事故後の中長期 環境モニタリングの課題について検討を行う。
廣内 淳; 渡邊 正敏*; 林 奈穂; 長久保 梓; 松井 康人*; 米田 稔*; 高原 省五
no journal, ,
原子力発電所事故後の長期的な被ばく評価において、沈着した放射性物質からの外部被ばくのみならず、再浮遊物質による吸入被ばくも重要な経路の一つである。屋内外での再浮遊物質による吸入被ばくを評価するうえで、屋外での再浮遊係数と屋内への侵入割合を評価する必要がある。これらの値は風速や環境条件(建蔽率、地目)に依存するものの、今までの確率論的リスク評価においては、一定の値が用いられてきた。そこで本研究では、最新の知見を基に、屋外での再浮遊係数と屋内への侵入割合に関して、風速と環境条件の依存性を評価し、確率論的リスク評価に重要なパラメータを整備した。